通常、日本で使用されている水道水は塩素で消毒されていますので、細菌は存在しません。 しかし、塩素で消毒後の死滅した細菌から、いろいろな生物活性物質ができます。 その代表的なものがエンドトキシンです。エンドトキシンにおける生体の副作用は多岐にわたり、特にエンドトキシンが血液に大量に侵入すると、透析中にショック(急激な血圧の低下や発熱や悪寒など)を引き起こす原因となります。 慢性的なものとしては、炎症物質が刺激されることにより、動脈硬化の促進、透析アミロイドの蓄積・線維化が促進されるなど、現在分かっている事象だけでもこれだけ多くのことが直接患者さまに降りかかってきます。 当院では厳格な管理のもと、今後さらに増え続ける長期透析患者さまの合併症対策、QOL の向上につとめ透析液の清浄化に取り組んでおります。 超純水透析液とは、厳密な管理といつくものフィルターを通して作成した微量なエンドトキシンなどの不純物が混入していない透析液の事です。 透析患者さまが「元気で長生き」するためには、なにより超純水透析液が必須条件です。
MIA(ミア)症候群という言葉をご存じでしょうか? MIA症候群とは、栄養障害(Malnutrition)・慢性炎症状態 (Inflammation)・動脈硬化(Atherosclerosis)の英語の頭文字をとったものです。 MIA症候群は、「慢性炎症状態では栄養状態を悪化させ、さらに動脈硬化の進展を助長する」ということですが、この慢性炎症を起こす一番の原因は透析液の汚染であることが分かっています。 分かりやすく言い換えると、「MIA症候群とは、不純物(特にエンドトキシンと呼ばれる細菌が出した毒素)が混じった透析液で透析を続けていると、慢性的な炎症が起き、それが引き金となって栄養状態が悪くなり、動脈硬化もどんどん進み、体がだんだん弱っていき、いろいろな合併症がでてくるようになる」という大変恐ろしい問題です。
当院では透析液清浄化にたいへん力を入れており、実際の取り組みについて一部ご紹介いたします。
透析に使用する水は、まず特殊セラミックを用いた活性器によって活性化され、 配管のクリーン化などに役立っています。
透析用の超純水を製造する装置。
滞留汚染防止の再循環システムを採用、熱水消毒機能により配管内の細菌は見逃しません。
超純水を作る原水の水源は2WAY化、通常の水道水だけでなく地下水も汲み上げています。
万が一の災害時も患者さまをお守りする安心の体制です。
フィルターはすべての装置に設置。
透析装置全台はもちろんのこと、透析液を作成する装置にもそれぞれ設置しています。
少しのエンドトキシンも逃しません!!
透析装置に装備されているフィルターは透析前にその性能をチェックする自己診断機能を有しており、極めて高い安全性を実現しています。
エンドトキシンは専用測定器で毎日測定。 生菌培養も行い透析液の管理は厳格に行っており、患者さまには常にクリーンな透析液を供給できています。 透析液を作成するための透析用水もとてもきれいです。
検査項目 | 透析医学会水質基準 | 当院の測定値 | |
---|---|---|---|
透析用水 | 細菌数 | 100 CFU/ml 未満 | 0 CFU/ml 未満 |
エンドトキシン | 0.050 EU/ml 未満 | 検出感度以下 | |
標準透析液 | 細菌数 | 100 CFU/ml 未満 | 使用していません |
エンドトキシン | 0.050 EU/ml 未満 | 使用していません | |
超純水透析液 | 細菌数 | 0.1 CFU/ml 未満 | 0 CFU/ml 未満 |
エンドトキシン | 0.001 EU/ml 未満 | 検出感度以下 |
※当院では、超純水透析液の基準をクリアした透析液による治療を実施しております。